CYLTIE.がなんか書く

なんか書きます。いろいろ書きたい。

ルミナス=ブルー2巻のラストを読んで、軽く感動すら覚えた話をさせてほしい

岩見樹代子先生著「ルミナス=ブルー」が完結しました。いい作品だったし、岩見樹代子先生の書く女の子は美しくて好きだったので、続いていくんじゃないかな~とか思っていたのですが、現実はなかなかうまくいかないものなのだなとか思います。百合クラスタの間でも、多少なりとも話題になったことだろうと(少なくとも自分のtwitter上では)推測します。

 

で、完結に合わせて自分も2巻を読んだわけですが、そういう終わらせ方をしてくるか! という感じで、びっくりしたし印象に残ったので、ネタバレ上等でつらつらと書いていきます。

 

(※ルミナス=ブルー、ななしのアステリズムのネタバレを含む記述があります)

 

写真が大好きな転校生・光と、彼女がみた元カノたちの百合物語。

 

光は、憧れの先輩であり写真家の葉山を追いかけてきた転校初日に クラスで二人の友だちができる。モデルの夢を追う寧々と、ギャル風の雨音。

 

絵になる二人を並べて早速撮影していた光だが 先輩から「寧々と雨音は中学時代付き合っていた」という 女子同士の過去の恋を聞いてしまい…。

 

ルミナス=ブルー(1) (百合姫コミックス)

ルミナス=ブルー(1) (百合姫コミックス)

 
ルミナス=ブルー(2) (百合姫コミックス)

ルミナス=ブルー(2) (百合姫コミックス)

 

 

ルミナス=ブルー、端的に言えば3人の恋愛のお話なのですよね。物語全体としてみれば、寧々と雨音の過去を知っていて、それまで唯一の写真部員でもあった葉山先輩も深く関わってくるので、物語としては4人のお話なんですけども。

 

で、本当はこういうことを書くとき「そもそもルミナス=ブルーはこういう作品でこういう経緯をたどってうんちゃらかんちゃら~」みたいな作品の話をしていかないといけない気もするんですが、そういうのはほかの人がやってくれそうだし(超他力本願)、自分が書きたいのは、ともかく最終話の雨音のあの一言に尽きるので、すっ飛ばしてその話をします。させてください。

 

 

「ねー あたしと寧々が付き合ったらさ たるたるはどうするん?」

 

「どうって…?」

 

「だって…もう別れてんの? 二人」

 

「「…!」」

 

「ちょっと~? 寧々さん二股ですか~?」

 

「ご、ごめん…! あの…ごめんね光 わたし…」

 

「いいんだよ~!

 私は二人が幸せなのが幸せだから!

 

「…ちょっとそんなのダメだって」

 

「3人で付き合っちゃえばいいじゃんっ」

 

 

 

「3人で付き合っちゃえばいいじゃんっ」

 

 

 

 

「3人で付き合っちゃえばいいじゃんっ」

 

 

 

 

やばくないですか?

 

百合漫画(というか恋愛漫画)という媒体で、こういうことをさらっと言ってしまうの、やばくないですか? 僕はこの台詞を見て「へええこういうことするんだ~?」って軽く衝撃を受けたのを覚えています。なんなら超遠回しに3Pしようぜ!とか言ってるようなもんじゃないですか。普通だったらなんやねんってなりません? 捏造トラップかよ。女と女の間に挟まりたがる女ってどう思います?

 

何でそう思ったのかっていうと、百合漫画(というか恋愛漫画)って、三角関係みたいな感じなったとき、普通は大体誰か1人が折り合いへし合いを付けて、2人と1人(でも3人は友達のまま)という結末を迎えるものだと思っていて。三角関係が成立するのなら、わざわざ、友達のままでいるか、好きな人の恋人になりたいかどうかで悩む必要もないわけで、恋愛漫画としてそれはぬるいよなぁとか思っていたわけです。

 

雨音と寧々は過去に付き合っていて、雨音は今でも寧々が好きだし付き合いたいと思っているなかで、寧々が、転校してきた光のことを好きになって付き合い始めてってなって、雨音からすればなんやねんあいつってなる話で。

 

それこそ、「ななしのアステリズム」っていう、これまた打ち切りで終わってしまった百合漫画があるんですが、あれはまさに「2人」と「1人」で「3人組」という終わり方をしていて。しかもそれが例によって、本作の主人公だったであろう白鳥司が1人という、主人公的に報われない終わり方をするやつで。「この痛みもまだ名前はないけれど、いつかわかる時が来るのかな」とかいうことを、寂しそうな顔しながらいうわけです。

 

琴岡と鷲尾が喧嘩して、司はどっちつかずで取り残されて、どうすればいいんだと悩みながら、3人で仲直りした矢先で、そんなのってないよな、とも思います。少なくとも自分が司の立場だったらなんだよそれ~とか言いそうです。

 

そんな感じで、恋愛漫画って、どうしたって1対1の関係にならないと成立しえないし、1対1の関係にならないといけない、みたいな部分があるなぁと思っていて。そのために失うものも少なくない中で、こうした悲観的な部分もあるからこそ、恋というものはどうやっても美しく描かれるし、神格化されるんだろうな~と思います。

 

そういうようなことを踏まえたうえで、ルミナス=ブルーのあのラスト、雨音のあのひとこと。雨音は、「2人」と「1人」という関係を取らなかった。それを書く勇気。
良く書けたなって感じだし、個人的には救われたような気持ちになりました。

 

救われたなって思ったのは、それはやはり、ルミナス=ブルーが3人の恋愛の物語で、どうしたって「2人」と「1人」という関係性では収まりきらないものだということを、作品側が提示してくれた、というのが大きいです。

 

光が寧々とちゃんと関係を終わらせて、もう一度寧々と雨音で付き合えばよくない?とか、雨音のことが好きだった葉山先輩の気持ちはどうなるんだ、とか思わないこともないですが。あの物語は、あの終わり方がベストだと、私は思います。

 

野中友先生のハミングガールという短編集のあとがきで「後ろ向きで甘やかしとは思いつつも、漫画でぐらいは逃避してもいいだろう」と書いていて、なるほど!ってなったのを思い出しました。漫画だからこそ、物語全体を見たうえでの、ああいう結末も許されるのだろうなと感じます。

 

結局百合って、女の子が女の子のことを思っていれば全部百合だし、その気持ちがソフトなものだろうとハードなものだろうと、百合は百合なのですよね。

 

百合漫画は必ずしも1対1の関係に拘らなくても良い、という結末を提示した、この「ルミナス=ブルー」という漫画は、ひょっとしたら、今後の百合漫画界の恋愛価値観に、何かしらの影響を与えていくのかもしれないな、なんて思いつつ、しがない一般人がつらつらと書いてみました。こういう終わり方をしてる百合漫画を自分が知らないだけで、もしかしたら既にあるのかもしれませんが。ともあれ、この作品を読めてよかったです。ありがとうございました。

 

「寧々はあたしもたるたるも好きで

 たるたるはあたしたちが好きで

 あたしだって3人一緒なのマジ楽しいしー…

 

 よくない? みんな幸せじゃん?

 嫌な人いんの?